国道57号から山中に入った大分県豊後大野市朝地町に「椿窯」陶芸小屋(教室)があります。朝地町出身で“東洋のロダン”と称される彫塑家、朝倉文夫(1883−1964)記念公園の一角にある自然環境に恵まれたところです。指導しているのは陶芸家、佐藤珠幸(じゅこう)さん(56)。
珠幸さんは関東周辺の陶芸家団体「東陶会」の理事をつとめています。「東陶会」は榎木孝明さん主演の映画「HAZAN」で広く知られた板谷波山(いたやはざん、1872−1963)などが1928年に結成。今年、80周年を迎えた東日本の陶芸作家団体としては最も古い歴史を誇っています。
佐藤珠幸さんは1950年に福岡県北九州市若松に生まれました。陶芸の世界に入った理由のひとつに、小学校の思い出をあげます。まだ蹴ロクロを使いこなせなかったため、手捻り(てびねり)でハート型の小皿を造って窯で焼いたことが心の片隅にあったからだと振り返ります。
1971年に東京クラフトデザイン研究所陶磁器専攻課を卒業したあと静岡県焼津市を拠点に創作活動を続け、1989年に大分県竹田市に移り住みました。珠幸さん不惑の40歳の時です。ちなみに竹田市は「荒城の月」などを作曲した滝廉太郎(1879−1903)が幼少時代を過ごしたところで荒城の月を作曲する時にイメージしたといわれる岡城跡が観光名所となっています。その後、珠幸さんは更に自然の中での焼きものを求めて現在の朝地町に窯を移し、田舎で創作した作品は毎年、大丸東京店美術画廊で開催される個展で発表されます。
珠幸さんは中国・宋代に完成したといわれる青磁の一種、“均窯”に力を入れています。青味がかった赤い上釉薬(うわぐすり)が特徴で、なかでも紫紅釉(しこうゆう)をめざしています。青くなくても青磁の分類に入り中国の故宮博物館にその名品が所蔵されています。それと、もうひとつは月の青白さを表現した月白青磁(げっぱくせいじ)です。この二つは再現できれば人間国宝の価値があるといわれています。
これまでに静岡県芸術祭賞受賞、朝日陶芸展富嶽展などに入選している佐藤珠幸さんは
「今後は陶芸のほか、染色(草木染、弁柄染め)や竹工芸に積極的に挑みたい」と意欲を見せています。
「椿窯」陶芸教室 愛の園 生朝倉文夫記念公園
申し込み・問い合わせ
■ 佐藤珠幸講師
〒879−6331
大分県豊後大野市朝地町鳥田154−1
TEL 0974−72−1087
※ 陶芸小屋(教室の日 第3、第4土曜・日曜
10:00〜17:00)
TEL 0974−72−1303
■ 朝倉文夫記念館
〒879−6224
大分県豊後大野市朝地町池田1587-11
TEL 0974−72−1300
○ 手ロクロ、ロクロなどで陶器(食器・花器) を制作。
今年度は陶器制作の合間に染色の学習も取り入
れた講座も実施。
〇 毎月第3、第4の土曜日・日曜日
(原則、月に2日間)
受講時間 10:00〜17:00
〇 2007年3月には教室生が造った作品展
を朝倉文夫記念文化ホールで行います。
〔 教室の設備 〕
粘土 ・・・・・・京土系、信楽系と唐津系を数種類
使用。
釉薬(うわぐすり)・基本的なものは20種類程度使
います。
ロクロ・・・・・・手まわしロクロ20台、電動ロクロ2台
窯 ・・・・・・倒炎式の灯油窯 (炉内容積0.5m3)
登り窯 (2室/炉内面積1.5m3)
制作道具・・・・・ヘラなど陶芸道具は各自購入
〔 料金 〕
入会金 ・・・・・・・・・・・・・・・ 5,000円
月謝(材料費等含む)・・・・ 8,000円
制作費(焼き代)・・・・・・・・ 1gあたり2円
取材/撮影/文 渡辺隆司
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